肥後五鶏

参考文献:熊本県 農業研究センター

熊本には、古い時代に作り出され、育てられた5種類のニワトリがあり、これらは肥後五鶏(ひごごけい)と呼ばれています。これらのニワトリは、長い時代盛衰のなかで、すでにたえてしまったものもありますが、先人の遺した貴重な遺伝資源

として、また、ふるさとの文化財として大切に守り、育てていく必要があります。

熊本種

熊本種は、明治20年(1887)から明治40年(1907)にかけて、熊本県下益城郡小川町を中心として、在来種にエーコク種を交配し、更にバフコーチン種や白色レグホーン種、バフプリマスロック種を交配して、産卵率の向上と羽色・体型の斉一化を図り、明治38年(1905)に「熊本コーチン」と命名した。

その後、大正10年(1921)に「熊本種」と改称され、大正13年(1924)と、大正14年(1925)に熊本種の標準画を発表した。

肥後ちやぼ

チヤボは、原産地・占城(チャンバ・現在のベトナム)から中国を経由して江戸時代の初期に日本へ渡来した鶏種である。チャボは日本に特有な畜養動物として、昭和16年8月1日に国の天然記念物に指定され、その主な産地の一つとして熊本県がある。

戦後チャボは熊本において、小羽数が愛好家数名により細々と飼育されているだけで、絶滅寸前であった。そこで、昭和43年(1968)に愛好家が集まり熊本県に残存するチャボ種を総称して「肥後ちゃぼ」と名付け「肥後ちゃぼ保存会」が設立され、保存活動が開始された。

天草大王

天草地方には、かって天草大王という世界的にも希な大型の肉用鶏が飼育されていた。

天草大王は明治中期頃中国から輸入されたランシャン種をもとに、天草地方において肉用に適するように大型に改良されたもの。大正時代には「博多水炊き用」として出荷していたと言われているが、昭和時代には「博多水炊き」は需要が落ち込んだため、飼養羽数が減少して絶滅した。そこで肥後五鶏のうち唯一絶滅したままの状態であった天草大王を復元し、博多水炊きにするほど肉質に定評のあった天草大王を熊本県産の地鶏肉生産鶏とした。

地すり

地すりは幕末から明治初期にかけて作出された品種で、一名「おとし」(注:「おとし」とはシャモと他の鶏種の一代交配種のことを言う)とも言われ、その外観はシャモに良く似ている。当初は福岡地方で多く飼育されていたが、その後絶滅してしまい、熊本付近で小羽数が飼育されている。その後、熊本においても昭和30年代になってから絶滅した。

復元は、昭和52年(1977)に黒色の中シャモ雄1羽を、短脚の達磨チャボ雌4羽に人工授精で交配し、羽化した雛のうち短脚だけ残し、交配には雌鶏だけを使った。短脚雌鶏に黒シャモ雄の累進交配を平成6年(1994)まで行い、その後閉鎖群育種を行った。

平成6年(1994)羽化の個体は、中シャモの短脚種だと思われる「地すり」をほぼ復元する

久連子鶏

久連子鶏が飼育されている八代市泉町は、九州の中央山岳地帯の中央西側に位置する。

久連子鶏は、この泉町五家荘の中でも最も南の奥まったところにある久連子地域で、古くから継承されてきた古代踊りの装飾の一つである花笠を飾るための長い尾羽を採取するために、300年以上にわたって飼い続けられてきた鶏種で地元では「地鶏」と称されていた。

久連子鶏は、昭和40年(1965)に熊本県の天然記念物に指定されている。